『救急精神病棟』(野村進)
日本唯一の「精神科救急」がある「千葉県精神科医療センター」を取材したノンフィクション。日本の精神医療のほとんどは長期収容型ですが、このセンターでは早期治療、短期入院、退院後のケアを目指しています。さまざまな症例をあげて、ここのシステムや、医師や看護師の奮闘ぶりが語られ、現代の精神医療の問題を一般人にもわかりやすく伝えています。
何かの書評でこの本について知り、図書館に予約を入れました。プライバシーに考慮しながらも、精神病に苦しむ患者や家族、病気を何とか治そうと力を尽くす医師や看護師を多角的にとらえ、臨場感溢れる文章で綴られているので、たいへん興味深く一気に読み終えました。
本の中に、精神病の患者は四重苦だとして、「病気そのものがもたらす苦しみ、その苦しみを家族にも友人にもわかってもらえない苦しみ、家族や友人を含む他者に伝えられない苦しみ、社会的な差別や偏見に晒されて生きなければならない苦しみ」と書いてありました。患者のこの苦しみを共有し、共に闘ってくれる医師や看護師の存在を知って、重苦しさの中にも救われる思いがしました。
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