『壊れた脳 生存する知』(山田規畝子)
この本は、モヤモヤ病による脳出血を起こして、「高次脳機能障害」になった女性医師が、自分の障害を冷静かつ客観的に綴った闘病記です。脳という臓器の不思議さをあらためて実感できた一方、障害を受け入れて前向きに生きる著者に勇気をもらいました。
高次脳機能障害とは、大脳の損傷によって、言語・記憶・思考など認知能力に障害が出ること。例えば、「視覚失認」という空間性認知障害は、ものの立体感や遠近感がない、時計が読めない、本を読むとき一行を読むと次にどこを読めばいいかわからない、などの症状が出ます。目は悪くないし、知能低下や意識障害もないのに、対象物を正しく認識できないのです。
そのほか、記憶、言語、注意にも障害が出て、著者は一時的に絶望しながらも、医師の目で障害を科学的に見つめ、障害のある生活に適応していきます。ひとつひとつたいへんな苦労なのに、それをさらりとした文体で綴ってあり、いわゆる「お涙頂戴」タイプの闘病記ではありません。
「どんな脳でも必ず何かを学習する」から「やろうという意志の力が必要」という言葉のとおり、困難なことにもあきらめずに挑戦する姿勢に、健常者の私のほうが励まされました。そして、最後に記された息子さんへの手紙には思いきり泣かされました。
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コメント
知り合いに「もやもや病」の方がいるので、思わず引き込まれてしまいました。
患者はもとより、家族の方のご苦労は、想像を絶するものでしょうね。
投稿: mino | 2004/05/16 16:18
minoさん、こんにちは。
この本の中に、「モヤモヤ病を抱えながらも、脳卒中を起こすことなく長生きする人もいる」と書いてありました。知り合いの方もそうだといいですね。
投稿: Tompei | 2004/05/17 00:24
Tompei さん,こんばんは~(^^)/
さきほどトラックバックを送らせていただきました。
「困難なことにあきらめずに挑戦する姿勢」
その通りですね。
だから,これほど勇気が与えられるんですね。
投稿: える | 2006/01/09 22:05
>えるさん
こんにちは。
古~い記事にトラックバックを送ってくださって、ありがとうございました。お返事が遅くなってごめんなさい。
えるさんのおかげで、自分の過去記事に再会(?)できました。ふだんは昔の記事なんてまったく読まないので、「こんな本を読んで、こんなふうに感じたんだな」と新鮮な思いがしました。
投稿: Tompei | 2006/01/14 13:39