『富士山』(田口ランディ)
さまざまな形で富士山と関わる人々をめぐる4編の短編小説集。富士山麓にある新興宗教施設で修行した経験を持つ29歳のコンビニ店員の話、富士山麓の樹海に遊びに行った中学生3人が自殺者に遭遇する話、富士山麓の市にて大量のゴミと暮らす老女の話、それぞれの思惑を秘めて富士山登山に挑む女性たちの話。
『コンセント』『アンテナ』『モザイク』の三部作以来、ひさしぶりに田口ランディの小説を読みました。『富士山』も三部作と同様、スピリチュアルなものを感じさせてくれますが、それが癒しにつながるのがこの小説集の特徴と言えます。この4編に登場する人々はみな、何らかの「生きづらさ」を抱えていますが、その人たちを富士山が見守り包み込んでくれていると捉えるランディさんに共感を覚えました。
私も富士山が大好きです。中央高速を西に走る時に見える富士山、新幹線の窓から見える富士山、飛行機の窓から見下ろす富士山……けっして見飽きることはありません。ランディさんの言うように、「美しく輝く富士山を見ると、なぜか得をした気分になる」のです。
「田口ランディ」を生んだきっかけのメールマガジンが、この春終了してしまったのは残念ですが、新たな活躍を楽しみにしています。
| 固定リンク
コメント