『輪違屋糸里』(浅田次郎)
ようやく読み終えました。うーん、悪くはないけれど、浅田次郎の長編としては期待したほどではなかった感じ。私にとってこの数年の小説ベスト5に入る『蒼穹の昴』や、それに優るとも劣らない『壬生義士伝』と比べると、いまひとつ物足りなかったのが正直なところです。浅田次郎特有のけれん味もあまり感じられず、全体的に淡々とした印象で、夢中になって読むという状況には至りませんでした。
新選組の芹沢派の粛清に至るまでの話を、島原の二人の天神、糸里と吉栄や、芹沢の愛人、お梅、そして、新選組の屯所、八木家と前川家の女房、おまさとお勝など、女の視点で語っている点はなかなか新鮮でよかったのですが、視点が頻繁に変わりすぎて、誰にも感情移入しづらいのが難でした。どちらかと言えば、タイトルになっている糸里より、お梅の生き方のほうが印象的(好き嫌いは別にして)。
だいたい、土方はああいう決着のつけ方を考える男とはどうしても思えないのです。だから、終盤の糸里とのいい場面も素直には感動できませんでした。芹沢派については新たな知識も増え、親近感を覚えましたが、試衛館組についてはあまり魅力的に書かれていない気がしました(気のせい?)。もしかしたら、新選組や浅田次郎にあまり思い入れのない人のほうが楽しめるかもしれません。
読んでいるとどうしても、芹沢は佐藤浩市、お梅は鈴木京香の顔が浮かんできます。もし映画化される時は、ぜひこの二人で見てみたい。糸里は小雪がいいかな。土方は山本耕史や上川隆也でなくてもいい……この土方は好きではないので(^^;)。
追記(2007年3月19日):
今秋、この小説がテレビドラマ化されるようです。TBS系『輪違屋糸里~女たちの新撰組~』(放送日未定)。土方は伊藤英明、糸里は上戸彩。イメージが全然違うんですけど、文句を言いつつ絶対見ると思います。
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