『それでも私は戦争に反対します。』(日本ペンクラブ編)
自衛隊のイラク派遣に際し、日本ペンクラブが「それぞれ得意のやり方でこの現実を表現する」ことを企画して、緊急出版した本。創作、手紙、批評、エッセイの4つの部門にわかれ、作家やジャーナリストなど45人がさまざまな角度から「戦争反対」を訴えます。
45編すべてから、日本が今たどりつつある道に対する危機感が伝わってきて、慄然とします。この本の出版後、事態はさらに急を告げ、自衛隊が多国籍軍に参加することになったにもかかわらず、あいかわらず国民の大半は危機感を持っていないという現実――その温度差は何なのでしょう。作家たちの危機感が杞憂であれば、どんなにいいか。
印象に残った言葉を以下に記します。
いずれの国にも、きれいな戦争などはないこと、「高邁な議論」の背後には、巨大な軍需産業の黒い石があることをしっかり見届ける必要があります。(澤地久枝)戦場にある感情とは、何度もいいますが、ただ憎悪だけです。そんな生き方死に方を私はしたくない。また子供たちにもしてほしくない。(立松和平)
戦争を伝えられた人びとはいつしか昂揚し、冷静な判断から遠ざかり、「勝利」の情報に躍る。けれど、それは相手にいかに被害を与えたかであり、大勢の人間を殺し、未来のある子どもたちを打ちのめし、町や村を破壊したかということに等しいのである。(大石芳野)
しかし、そうなる時は、あっという間だ。気がついた時にはなっている。今はそのための大きな曲がり角という危機感を持つ人は多い。目には見えない形でひたひたと押し寄せ、突然はっきりと正体を現す。その時では遅いのだ。(下重暁子)
<もっとも悲劇的であるのは、悪人たちの辛辣な言葉や暴力ではなくて、善人たちの恐ろしいまでの沈黙と無関心である。> マーチン・ルーサー・キング・ジュニアの言葉より。(井上ひさし)
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