ナンバ歩き
健康雑誌の広告で「ナンバ歩き」についての見出しを見て以来、ずっと気になっていました。健康にいい「ナンバ歩き」って、どんな歩き方なのか? そもそも、「ナンバ」って何?
そこでネットで調べたら、興味深い情報がたくさんありました。「ナンバ」とは、江戸時代まで日本人がしていたとされる歩き方や走り方で、「右手-右足」「左手-左足」を同時に出す方法。佐川急便の飛脚マークからもわかるように、それが一般的な歩き方(走り方)でした。
ナンバは今でも、能や歌舞伎、日本舞踊、相撲、剣道などの伝統芸能の中に残っています。体をねじらないナンバ歩きは、着物を着ても着崩れることがなく、日本人には理にかなった動きでした。明治になって洋服文化が入ってきた時から、今の「行進歩き」に変わったようです。
このナンバ歩きが何故、健康にいいのか? 無意識のうちに行進歩きをするのではなく、意識してナンバ歩きをすることによって、脳が活性化して、ボケの予防や老化防止に役立つそうです。血圧が安定した、腰痛が治った、視力が回復した、などの報告もあります。
さらに驚いたのは、アテネ五輪に出場した陸上の末続慎吾選手も「ナンバ走法」を取り入れているということ。右手右足を同時に出すわけではありませんが、体をねじらないナンバの走法を取り入れたフォームによって、記録を伸ばしたといいます。
私もさっそく試してみましたが、動きがぎこちなくなり、なかなかうまくいきません。みなさんもぜひ一度お試しください。そうそう、『新選組!』で山南を演じた堺さんは、ナンバ歩きにこだわっていたという話も聞きました。
ナンバの語源についてはどこにも書いてありませんでした。ご存じの方はお知らせいただければ幸いです。
追記(2005年3月17日):
本日付読売夕刊の「こども」のページに「疲れず速いナンバ走り」という記事が掲載されていました。ナンバ走りを練習に取り入れている桐朋中学・高校のバスケットボール部を取材しています。
同部のコーチの矢野龍彦・桐朋学園大学教授によれば、「ナンバ」とは「難場」で、難しい場面をどう切り抜けるか、体の動きを工夫することを指すそうです。同部長の金田教諭も「ナンバは自分をみつめる作業。『うまくなりたい』『強くなりたい』など強い意欲がないと長続きはしない」と語り、同部でもナンバを強制はしていないとのこと。熱心に練習をした生徒だけがナンバ走りを会得し、群を抜いて早く走っているそうです。
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コメント
私もナンバに興味を持った1人です。桐朋高校バスケットボール部の実践をまとめた2冊の本を読みました。「ナンバ走り」「ナンバ身体論」両方とも光文社新書です。ナンバの語源についても書いてあったように思います。
私はダイエット目的で始めているウォーキングにナンバの動きを取り入れています。右足を出すときに右手を出すとバランスが崩れてしまします。腕は大きく振らず、だらっと下げたままで、右足が地面を蹴るとき、右膝を右の手のひらで押し下げてあげるイメージで手のひらを返します。左足が地面を蹴るときは左手の手のひらを返して、左膝を押し下げてあげるようにイメージして歩いています。リズムに乗ると意識することなくすいすいと歩くことができます。本当は、西洋式に両手を大きく振って、上体をひねって歩いた方がダイエットには効果的なのかもしれませんが、今はナンバ歩きが気に入っています。
投稿: silverback1007 | 2004/08/26 15:26
>silverback1007さん
はじめまして。ご丁寧なコメントをありがとうございます。
ナンバ歩きでウォーキングを実践されているんですね。教えてくださったコツをさっそくこの場で試してみました。うーん、頭では何となくわかったような……でも、体はわかっていないような感じです(^^ゞ。リズムをつかむまで、めげずに頑張ります。
本は図書館に予約を入れました。読むのが楽しみです。
>本当は、西洋式に両手を大きく振って、上体をひねって歩いた方がダイエットには効果的なのかもしれませんが、今はナンバ歩きが気に入っています。
そうそう、デューク更家のウォーキングのほうが即効性がありそうに見えますね。でも、そのうちナンバ歩きが巻き返すかも? これからの動向に注目したいと思います。
投稿: Tompei | 2004/08/26 19:17
「なんば」については、20年くらい前に知って、少し調べたことがあります。
江戸時代は当然、なんば歩きだったことは「ペリーの黒船来航」の絵に如実に描かれています。日本人は「なんば歩き」、アメリカ人は現代の歩き方です。こうしたアメリカ人が日本に入ってきてから、なんば歩きが廃れたものと思われます。洋服の普及も影響していると思います。
そもそも「なんば」とは、「農民が足にはめる丸い木の板」のことで、農民は、それを履いて、泥田んぼの中を「よいしょ!」と歩くわけです。すると自然に手と足が一緒に出るんですよね~。ちなみに、この「なんば」は、大阪の難波で実際に使われてました。地名との関係も全く無いとは思えません。
そうした農民が「なんば」だったのは理解できるのですが、武士もそうでした。剣道もなんばです。なんば歩きのメリットは「上下の揺れが少ない」ため、切り込むのに良いのでしょう。(たぶん)
「やぶさめ」の馬の走り方も、「なんば」です。西洋の馬とは走り方が違います。それで揺れを少なくして正確に弓を射れるのですね~。
近年では、男子バスケットが「なんば」を取り入れてます。テレビで、なんば走りを実際にやってたのですが、ほとんど手は振りません。ゴリラが走る様子に似ています。ある意味、動物的には最も自然な走り方なのかも知れません。手をダラ~ンとおろして、ウホウホ走ります。西洋の走り方のように手を前後に振ると、手と足を同時に出すのが難しいので、手はあまり振りません。これならば、かなり早く走れますし、手にボールや剣を持っても、体はあまり揺れないから便利です。
投稿: もりぷとん(Moripton) | 2004/08/27 02:19
>もりぷとんさん
おはようございます。ご丁寧なコメント(ひとつの記事になりそうですね!)をいただき、感激しています。
>そもそも「なんば」とは、「農民が足にはめる丸い木の板」のこと
そうなんですか! 懸案だった語源がわかって嬉しいです。ナンバ歩きという言葉を見て、まず大阪の難波を思い浮かべました。その難波とも関係があるかもしれないのですね。
>「やぶさめ」の馬の走り方も、「なんば」です。西洋の馬とは走り方が違います
これまた驚きました! 馬本来の走り方を変えることができるのか?! そう思ってネットで調べたら、下記の文章を見つけました。
馬は、普通は斜たい歩といって右前足が出ると左後ろ足が出る。斜めの足が同時に出て体をねじるように進んでいきます。ところが、時々左前足と左後ろ足が一度に出る馬がいる。これを側たい歩といいます。牛は側たい歩です。馬は斜たい歩なんですが、時々側たい歩の馬が出る。日本では、明治まで基本的に馬に側たい歩をさせ、斜たい歩で歩く馬は右前足と右後ろ足を棒で結び、わざわざ側たい歩に変えていたんです。
(縄文民俗文化シンポジウム「縄文の踊り」より)
男子バスケットもナンバを取り入れているとのこと。今度、試合を見る機会があったら、注意してみます。マラソンの高橋尚子選手の走り方もナンバを意識したものらしいです。
ナンバの奥深さを垣間見て、ますます興味をそそられています。詳しいコメントをありがとうございました。
投稿: Tompei | 2004/08/27 07:41
こんにちは、涼 です。
さっそく「ナンバの身体論」を購入して読んでいるところです。
トラックバックをつけさせて頂きました。
こちらでのコメントも参考にさせて頂きました。
もりぶとんさん、涼のブログへのコメントを有り難うございました。
Tompeiさん、ここを使わせて頂いてすみません。
投稿: 涼 | 2004/09/03 16:01