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2004/09/07

『エトロフ発緊急電』(佐々木譲)

エトロフ発緊急電 (新潮文庫)

 お薦め本として、友人からまわってきました。太平洋戦争の口火を切った1941年12月8日の真珠湾攻撃をめぐるスパイの話。日本海軍の動向を探るために日本に潜入した日系アメリカ人のスパイが、千島列島の択捉(エトロフ)島に渡り、そこから連合艦隊が真珠湾に出撃するのを確認し、その情報をアメリカ本国に打電しようとするが、はたして……というストーリー。

 『ベルリン飛行指令』と『ストックホルムの密使』(両作品とも未読)の間に書かれた第二次大戦三部作の二作目で、山本周五郎賞と日本推理作家協会賞を受賞しています。

 スペイン内戦に義勇兵として参加した日系二世の主人公、自国を離れて日本の底辺社会で辛酸をなめてきた朝鮮人スパイ、南京で恋人を日本軍に虐殺されたアメリカ人宣教師、そして、択捉島でひっそり生きるロシアとの混血のヒロイン……など、登場人物の造詣が見事で、単なるスパイ小説で終わらない感動巨編。600ページ以上の長編にもかかわらず、あっという間に読み終えました。

 小説として楽しみながらも、史実の部分の重さ、それに翻弄される登場人物たちの人生にいろいろ考えさせられました。また、"北方領土"の択捉島に日本人が住んでいたこと自体、不思議な気がしました。先頃、小泉首相が北方領土を視察しましたが、そこがかつて日本の領土であったことを実感した次第です。

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コメント

面白そうですね、こういう虚実が入り交じった小説は、私も好きです。最近、老眼で読書から遠ざかっていますが、読んでみたくなりました。
スペイン内乱に参加した国際旅団の中に、日本人がいないかと調べたことがあり、やはり日系二世でコックをした人が1人だけいたという記事を見た事があります。
良く調べたんでしょうね。

投稿: mino | 2004/09/07 12:41

>minoさん

 おはようございます。

 史実に虚構を交えつつ、それがあたかも事実であるかのように見せる作家の技はすごいですよね。

>日系二世でコックをした人が1人だけいた

 そうなんですか! その話にインスピレーションを喚起され、小説に取り入れたのかもしれませんね。興味深いお話を聞かせてくださって、ありがとうございました。

投稿: Tompei | 2004/09/08 07:49

私、佐々木譲の作品との出会いはこれでした。いまでも『エトロフ発緊急電』が一番だと思っています。

投稿: ジャッカル | 2010/03/16 22:13

>ジャッカルさん

 はじめまして。コメントどうもありがとうございます。

 ジャッカルさんのコメントのおかげでこの小説の面白さを思い出しました。佐々木譲さんは昨今、警察小説で人気を博し、直木賞も受賞されましたが、残念ながら私はそのあたりは未読です。機会があったら、読んでみたいと思いつつ、なかなか手が回りません。

投稿: Tompei | 2010/03/17 11:18

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はじめまして。こんにちは。 「エトロフ発緊急電」(←大好き)の直接の記事ではないのですが、 この小説についても触れてはいますので こちらの記事にトラックバ... [続きを読む]

受信: 2004/11/30 20:06

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