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2004/10/16

『センセイの鞄』(川上弘美)

センセイの鞄 (文春文庫)
センセイの鞄 (文春文庫)

 前から読みたいと思っていた小説ですが、涼さんのブログでこの作品に関する記事を読み、ますますその思いを強めて、図書館に予約を入れたところ、ようやく順番が回ってきました。

 まもなく38歳のツキコさんと、70代と思われる高校時代の国語教師「センセイ」との、メルヘンのような大人の恋を描いた短編連作。メルヘンと言っても、甘くロマンチックな夢物語ではないけれど、様々な人生経験を経て出逢った二人の間に漂う雰囲気は、どことなくメルヘンチックで生活臭がありません。それが、ゆったりと時間をかけて、確かな絆に育っていくのです。

 ハイミス(死語?)のヒロインと言い、きのこ汁、おでん、蛸しゃぶ、湯豆腐など美味しいものを二人で味わいつつ親密さを深める設定と言い、昔読んだ田辺聖子の小説を思い出しました。田辺聖子だったら、ツキコさんは関西弁をしゃべって、アフォリズムがあちこちに散りばめられているはず。

 川上さんはあまり多くを語らず、それゆえに読者はいろいろ想像をめぐらせながら、センセイとツキコさんの会話を楽しみ、二人の関係を見守ることができます。切ない結末ですが、心にあたたかいものが残る小説です。人恋しい秋の夜長に読むのにふさわしい一冊。

 この小説はWOWOWでドラマ化され、ツキコ-小泉今日子、センセイ-柄本明のキャストで放映されたそうです。うーん、ちょっとイメージと違うような……センセイが若すぎる。センセイにふさわしい俳優はちょっと思いつきません。

 涼さんの記事にトラックバックさせていただきました。

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コメント

あ、トラックバックを有り難うございます。

∥うーん、ちょっとイメージと違うような……

そうなんですよね。誰かいい人いないかなと思ったのですが、柄本さんがうまく演じていたのかもしれません。

田辺聖子的ハイミスの話は随分読みましたし 当時周りにもかなりいたけれど(当然関西弁で喋っている)、この本から連想は出来ませんでした。身近すぎたのかな?
というより、彼女たちとセンセイとが結びつかなかったのかもしれません。

あ、全然違うけど、川田順のことはどうだろう?

投稿: | 2004/10/16 14:58

こんにちは。
私も先日、図書館で見つけて、この本を読みました。
自分の恩師を好きになるって、ああいう感じなのかな。
WOWOWの放送は観逃してしまったのですが、この本は映像に置き換えず、自分の中でイメージをふくらませたほうがよさそうに思いました。


投稿: SHIGEちゃん | 2004/10/16 15:10

 涼さん、SHIGEちゃん、こんばんは(^^)。

>涼さん

 この作品と田辺聖子の小説のイメージがダブるかどうかは、読み手の捉え方しだいだと思いますが、川上さんのプロフィールをネットで調べたら、川上さんが影響を受けた作家の一人に田辺聖子さんをあげていて、私としては嬉しく感じました。

 川田順って、「老いらくの恋」という言葉を流行させた歌人なんですね。実は今回初めて知りました。

>SHIGEちゃん

>自分の中でイメージをふくらませたほうがよさそうに思いました。

 そうですね……私の中では、センセイとツキコさんが居酒屋のカウンターで美味しいお料理をつまみながら、一杯やっている姿が浮かんでいるんですが、それを大切にしたいと思います。

 ツキコさんの高校時代、このセンセイは50歳くらいだったんですよね。ふと、自分の高校時代の先生を思い出したりして……(^^ゞ。

投稿: Tompei | 2004/10/17 00:59

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» 川上弘美【センセイの鞄】 [徹也]
同じ著者の【パレード】を読むには本書から入った方が良かろうという単純な理由で読み始めた。 しかし、一期一会というか、人との繋がりを本当に大切にしたいと思える本だ。 [続きを読む]

受信: 2004/10/16 15:02

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