『最後の言葉』(重松清・渡辺考)
最後の言葉 戦場に遺された二十四万字の届かなかった手紙 (講談社文庫)
太平洋戦争中、南方戦線に派遣された日本兵が戦地で書き綴った日記や手紙が最近になって、米ワシントンの公文書館やオーストラリアの戦争記念館で発見されました。その日記の書き手を特定し、それを日本の遺族に届けるというドキュメンタリー番組をNHKが昨年、制作・放映したそうですが(残念ながら、私は観ていません)、この本はその番組の制作ルポです。担当ディレクターの渡辺考氏と、番組のレポーターを務めた作家の重松清氏による共著。
この夏、『昭和史』(半藤一利)という本を読んで、第二次大戦について少しはわかったつもりになっていましたが、それはあくまでも知識としての第二次大戦であることを、この本を読んで痛感しました。
この『最後の言葉』には、サイパンやガダルカナルなどの戦場で過酷な日々を送った日本兵の生の声が詰まっていて、それぞれの言葉が深く心に突き刺さります。勇ましい言葉の中に垣間見える、戦争への疑問や死に対する恐れ。そして、家族や恋人への熱い思い。戦意高揚をうながす大本営発表の「大きな言葉」ではなく、個人の「小さな言葉」の中に真実があるようです。
また、戦死した家族の日記を数十年経った今、手に取って故人の書いた文章を読む遺族の当惑や喜びや感動もストレートに伝わってきます。
だから、戦争はいけないのだ――という結論に導いているわけではありません。南の島で戦死した人たちの「小さな言葉」を読んで、それぞれが何かを感じることが大切な気がします。
| 固定リンク
コメント