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2004/12/17

「押し迫る」と「押し詰まる」

 先ほど書いた記事の中の「今年も押し迫ってきた」という言葉遣いに対して、涼さんより「押し詰まってきた」の方がいいのではないかというご指摘をいただきました。どうもありがとうございます。おかげさまで記事がひとつ書けそうです。

 まず、広辞苑による語義は次のとおり。

 ・押し迫る    まぢかに来る。限度ぎりぎりになる。
           「提出期限が押し迫る」「山が海岸に押し迫る」
 ・押し詰まる   ①切迫する。さしせまる。「情勢が押し詰まる」
           ②年末に近くなる。「今年も押し詰まった」

これを読んだかぎりでは、「今年も押し詰まる」の方が正しい使い方であると考えられます。

 ところが、niftyのウェブ辞書(「大辞林」三省堂)によると、こうなります。

 ・押し迫る    間近に迫る。
           「入学試験が押し迫る」
           「今年も大分押し迫りましたね」
 ・押し詰まる   ①年の暮れに近くなる。押し迫る。
             「年も押し詰まった三十日」
           ②期限が近づく。さし迫る。「納期が押し詰まる」

「年が押し迫る」も「年が押し詰まる」と同様に使えるというわけです。

 でも、改めて考えてみると、「押し迫る」は何かが迫っている時に使う言葉であって、本来は「年が押し迫る」はおかしいのではないか、という気がしてきました。「暮れが押し迫る」とは言っても、「年が押し迫る」とは言わないはず。でも、「暮れが押し詰まる」「年が押し詰まる」は使えるので、そのあたりが入り乱れて、いつの間にか「年が押し迫る」という使い方もするようになったのではないでしょうか。

 ちなみに、Googleの検索結果は以下のとおりで、「今年も押し迫る」派が優勢です。
  今年も押し迫って    7090
  今年も押し詰まって   1070
  暮れも押し迫って    4160
  暮れも押し詰まって   519
いったい、どう考えたらいいのでしょうね。私はとりあえず、これからは「今年も押し迫る」はやめておこうと思っています。

 話は少々ずれますが、NHKのサイトに、「暮れも押し迫る」と「暮れも押し詰まる」の違いについて、興味深い解説がありましたので、コピーしておきます。

一般的には同じ様な意味で使われていますが、放送では「暮れも押し迫る」は「暮れに近くなること」、また「暮れも押し詰まる」は「暮れの中でも、その終わり(12月末)に近くなること」の意味として使い分けています。

【解説】「押し迫る」も「押し詰まる」も、ある事や時期が「近づいて来た状態」「間近になった感じ」をいいますが、前者より後者のほうが「より差し迫った状態」「余裕のない感じ」を指します。このため放送では、それぞれ次のような意味あいで使い分けています。
◇「暮れも押し迫る」・・・・ 暮れに近くなること
◇「暮れも押し詰まる」・・・ 暮れの中でも、その終わり(12月末)に近くなること


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コメント

成る程、勉強になりました。大体、押し詰まるという言葉自体、初めて知りました。お恥ずかしい。でも不思議ですね。別に年明けにやってもいいのに、何故か年内に片付けたいと思うことが山積。確かに、押し詰まるという語の持つ圧迫感がぴったりです。あ、もっと年末で使うんでしたね。

投稿: ayakokin | 2004/12/17 19:08

えっとですね、涼の場合 かなり慣用的にというか直感的にというか、そういうことが多いので(勿論書かせて頂く場合は典拠は調べますが 徹底的にということはなく、自分の典拠が示されればそれで良しとしています (^^;)) 現在は許容範囲だという辺りが抜けていることが多いです。

Tompeiさんご指摘のように「押し迫る」には、受動的な意味合いが強いような気がして 違和感がぬぐえないのだと思います。

どうも失礼しました m(_ _)m


投稿: | 2004/12/17 20:15

度々すみません。補足です。

∥「押し迫る」には、受動的な意味合いが強いような気がして 違和感がぬぐえないのだと

「押し迫る」は、自分が位置しているところと別のところにあるものが迫ってくる感じ(あくまで感じです)。「押し詰まる」は、渦中にあっても構わないといったところでしょうか。
だから、今年の中にいるのに、それが迫ってくるのは変ねという風に感じてしまうのでしょうね。

こうしたことはどこでも書けるというのではなく、英語がベースでもそれを日本語で現すことをしていらっしゃるTompeiさんだから(というより、これまでおつき合い頂いているTompeiさんだから)書かせて頂きました。失礼の段、ひらにお許しください。

使い方があいまいになった語はもっとあったなぁと思いつつ、今思い出したのは「侃々諤々」と「喧々囂々」でした。

投稿: | 2004/12/17 21:04

>ayakokinさん

 こんばんは。

 暮れも押し迫り、さらに押し詰まりつつあるのに(^^ゞ、大掃除も年賀状もほったらかして、PCに向かっているダメ主婦です(^^;)。とは言え、やっぱり新年を迎える前にちゃんと区切りをつけておきたいものですよね。不思議ですね。

投稿: Tompei | 2004/12/17 21:58

>涼さん

 こんばんは。

 いえいえ、涼さんのコメントのおかげで、何気なく使っていた言葉をチェックすることができて感謝しています。

>「押し迫る」は、自分が位置しているところと別のところにあるものが迫ってくる感じ

 そうなんですよ、「来年が押し迫ってくる」ならわかるんですけれどね。その点、「暮れ」の場合は「年の終わり」が迫ってくるからいいのかな、と思うのですが、考えているうちによくわからなくなってきました。

 私は、こういうことをああでもないこうでもないと考えるのが好きなので、また何かあったら、ご遠慮なくおっしゃってください。よろしくお願いします。

 「侃々諤々」と「喧々囂々」……うう、まず読み方も自信がありません。そのうちまた取り上げてみたいと思います。あと、「なおざり」と「おざなり」も辞書で確認しないと使えません。

 

投稿: Tompei | 2004/12/17 22:00

しつこくやってきました、忘れ物です。
NHKの使い分け、納得です。

・押し迫る:暮れに近くなる
・押し詰まる:暮れの中で、終盤近く ですね。

ま、言葉は生き物ですから だんだん変わっていくのはやむを得ないと思います。

投稿: | 2004/12/17 22:21

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