『おしゃれの階段』(光野 桃)
40代前後の女性で「何を着たらいいかわからない」とお嘆きの方に、おすすめの本です。おしゃれの具体的なノウハウもさることながら、おしゃれの根本にある「生き方」について考えさせられ、共感を覚えると同時に、前向きな気持ちになりました。
ファッション雑誌「ヴァンサンカン」の編集者をしていた光野さんは、ご主人の転勤に伴い仕事をやめてミラノに渡り、そこで、イタリアの素敵なマダムたちの装いやライフスタイルから多くのことを学びます。これは、その時の体験をもとに、40代の女性に向けて書かれた(「婦人画報」連載)おしゃれについてのエッセイです。
それは、「暮らし」という、人間にとって最も基本的なことをおろそかにしない人の美しさだった。 (中略) 家族に尽くし、自分にも手をかける。そうして笑顔で日を送る――。 イタリア・マダムの美の秘密、その第一の鍵はこの生き方にこそあった。
つまり、日々の暮らしをおざなりにして、外出する時だけおしゃれに気を配っても、本当のおしゃれとは言えないということ。外出時にどんなに取り繕っても、知らず知らず化けの皮がはがれて、おしゃれとは縁遠い日常が顔を出しているのかもしれない……おお、怖い!
イタリア人のおしゃれの根本にあるものは「自分らしくありたい」という強い思いである。私っていったいどういう存在なのか、どう生き、何をしたいのか――そのことを常に考え、自分の内面と正直に向き合っていくことの中に、おしゃれ=「外見をどのように表現するか」ということも含まれる。どうやら、私が「何を着たらいいかわからない」のは、「どう生きたいか」「何をしたいか」という点がはっきりしていないから、らしい。まず、それを考え、「自分らしさ」を認識しなくては! このままずるずると「おばさん街道まっしぐら」は悲しいので、この機会に自分を見つめなおしたいと思います。やっぱり、いくつになってもおしゃれでいたいもの!
(新潮文庫/『洗練の法則』改題)
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