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2005/04/16

『葉桜と魔笛』(太宰治)

斜陽・人間失格・桜桃・走れメロス 外七篇 (文春文庫)
斜陽・人間失格・桜桃・走れメロス 外七篇 (文春文庫)

 葉桜の季節を迎え、この『葉桜日記』に「葉桜」の検索ワードで来られる方がかなりいらっしゃるようす……ご期待にそえずに恐縮です。昨年のこの季節はまだブログを始めたばかりで、検索エンジンにかかることもなかったのに、と改めて1年の重さを感じています。

 私も「葉桜」で検索してみたところ、太宰治の『葉桜と魔笛』という短編にたどり着きました。太宰治の小説は学生時代に『人間失格』や『斜陽』などを読み漁り、太宰の世界に夢中になった時期がありましたが、『葉桜と魔笛』は未読だったようです。

 桜が散って、このように葉桜のころになれば、私は、きっと思い出します。――と、その老婦人は物語る。

 という出だしで、若くして病死した妹との思い出を振り返ってひとり語りが始まります。腎臓結核で余命わずかな妹に届いた恋文の束を見つけ盗み読みした姉(語り手)は、思い余ってその恋人に成り代わって妹宛の手紙を書く――妹はその手紙を姉に読ませて、意外なことを語り始めます……。姉妹それぞれの思いが美しい文章で綴られ、短いけれど心に残る小説です。

 青空文庫で公開されているので、興味のある方はこちらでお読み下さい。ちなみに、太宰の代表的な作品はほとんど青空文庫で読むことができます。

 太宰治の作品にはこの『葉桜と魔笛』以外にも、いくつか「葉桜」が登場します。葉桜を愛していたのかもしれませんね。

 葉桜のころで、光り輝く青葉の陰で、どうどうと落ちている滝は、十八歳の私には夢のようであった。  『デカダン抗議』

  頭を挙げて見ると、玉川上水は深くゆるゆると流れて、両岸の桜は、もう葉桜になっていて真青に茂り合い、青い枝葉が両側から覆いかぶさり、青葉のトンネルのようである。  『乞食学生』

 

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コメント

きっと読んでいると思うのですが、すっかり忘れていて初めての感覚で読み直しました。太宰はどうしてあんなに引き付けたのでしょうね。今の若い人たちも太宰を読んでいたりするのでしょうか。(ソンナコトハ ドウデモヨクテ  ジブンモダザイハスキダ ト  タダ ソレヲイイダケナノニ ツマラヌ) (ちょっと まねごと)

投稿: | 2005/04/16 21:22

>惑さん

 続けてコメントありがとうございます。

 惑さんも太宰がお好きだったんですね。私は一時期かなりかぶれていて、自死にさえ幻想を抱いていました(^^;)。太宰の作品を続けざまに何作か読んだら、書く文章が太宰調になったものです。結局、ミーハーなんですね(^^ゞ。

投稿: Tompei | 2005/04/17 02:04

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