« 教育実習先の先生 | トップページ | 『新選組!』続編が放送決定! »

2005/05/26

『ひとを<嫌う>ということ』(中島義道)

ひとを“嫌う”ということ (角川文庫)
ひとを“嫌う”ということ (角川文庫)

 ビアンカさん涼さんが記事に書いていらして、興味を持ったので、さっそく図書館から借りてきました。

 「ひとを好きになることと同様ひとを嫌いになることの自然性にしっかり目を向けよ」という著者の「思想」を熱く語った本。中島氏はもともと人の好き嫌いが激しいうえ、家族に激しく嫌われたのがきっかけで、「嫌い」という感情をテーマにすることにしたようです。「嫌い」の原因を徹底的に探り、自分の主張を展開する過程はいかにも哲学者らしく理詰めで、少々辟易しながらも興味深く読みました。

 実は私、かなりの「嫌われたくない症候群」人間。生まれつきの性分か、育った家庭環境のせいか、無意識のうちに人に嫌われないように考えて行動をしているところがあります。「嫌う」ことも「嫌われる」ことも「悪い」ことという大前提があるので、自分や他人のそういう感情をできるだけ見ないようにしているようです。

 中島氏に言わせれば、「嫌い」に向き合わない欺瞞的な「善人」ということになりますね。よく言えば、アクがなくて人当たりがいい、悪く言えば、人畜無害な八方美人。最近、何だかそんな生き方に疲れてきたし、今更ながら疑問を感じるようになってきたので、この本を読んで随分気が楽になりました。

 人間同士が嫌い合うことを素直に認めることから、むしろ他人に対する温かい寛大な態度が生まれてくる。他人を嫌うことを恐れている人、他人から嫌われることを恐れている人は、自分にも他人にも過剰な期待をしている。それは、たいへん維持するのが難しい期待であり、ささいな震動によってガラガラ崩れてしまいます。

 なるほど、言われてみれば、確かにそんな気がします。それに、嫌うことや嫌われることを恐れるばかりに、自分らしく生きられなかったらつまらない一生になってしまいそうです。「嫌い」という感情を認め、軽くあっさりと付き合っていこう、そういう前向きな気持ちになれました。

 ビアンカさんと涼さんの記事にトラックバックを送らせていただきます。

|

« 教育実習先の先生 | トップページ | 『新選組!』続編が放送決定! »

コメント

こんばんは、涼はどちらかというと「嫌われても平気だよ」というタイプですが、自分が嫌うことに一種の罪悪感があったので、気が軽くなったこと (^^;)
自分に都合のいいところだけ頷いております。

投稿: | 2005/05/26 20:56

>涼さん

 おはようございます。コメントと折り返しのトラックバック、ありがとうございます。

 何となく気が合わない人、虫が好かない人は誰にでもいるはずなのに、そういう感情はよくないとインプットされているため、誰かを嫌う自分は何て器の小さな人間なんだと思ってしまうんですよね。嫌いという感情は自然なこと――考えてみれば当たり前だけど、今まで聞いたことがなかったので、妙に納得してしまいました。

投稿: Tompei | 2005/05/27 07:52

Tompeiさんもお読みになったんですね。
「嫌われるのが好き」という人はたぶんこの世にいないでしょうけれど、あまりそれに振り回されても苦痛ですよね。

私もこの本を読んで気が楽になりました。TBありがとうございます。

投稿: ビアンカ | 2005/05/27 08:36

こんにちは。Tompeiさん。
私の実感として、「この人むしがすかないなぁ」って人は、大体後で気付くと「認めたく無い自分の一部にそっくりでした。。。」ということばかり。心理学的には「shadow」、、でしたっけ。
ちょっと本筋とずれますね、すみません。

投稿: ayakokin | 2005/05/27 09:31

 ビアンカさん、ayakokinさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

>ビアンカさん

 日本人はとくに「嫌われたくない症候群」が強いように思いますが、そんなことはないですか? 「和」とか「協調性」が美徳とされてきたからかもしれませんね。そのよさもあるけれど、無理をするのはしんどいですよね。さりげなく「嫌い」とお付き合いしていきたいものです。

>ayakokinさん

 「認めたくない自分の一部にそっくり」な人を避けたくなる気持ち、私にもあります。というか、私もこのケースが多いかも。この本の中にも、「嫌い」の原因として「自分の弱点を相手に投影する」というのがあります。自分のイヤな部分がよくわかっているので(でもなかなか克服できない)、誰かの中にそれを見るのがとってもイヤなんですよね。

投稿: Tompei | 2005/05/27 14:53

お久しぶりです。もりぷとんです。ブログは一旦辞めたのですが、今度は音声ブログを再開しました。肉声で語ってますので、よかったら聴いてやってくださいまし。。。(恥)。

で、「嫌う」ということですが、もりぷとんも親や先生から「みんな仲良くすること」が美徳のように教えられてきました。

しかし、実際に社会に出てみると「嫌い」という意思表示をはっきり示してあげた方がいい場合も多いことに気がつきました。

今では、できるだけ嫌いな人や場所(そしてサイト)には、かかわらないようにしているので、かなり快適な生活が出来ているように思います。

投稿: もりぷとん(Moripton) | 2005/06/06 01:40

>もりぷとんさん

 おひさしぶり! お元気そうで何よりです。

 音声ブログとはすごいですね。この後、さっそくお訪ねします。

 みんなで仲良くというのが理想だけど、人間関係はそう単純にはいきませんよね。好き嫌いの感情は理屈ではないので厄介です。嫌いな人に関わらないですめば、それが一番だけど、時にはどうしても関わらなければならない場合があるのが困りものです。

投稿: Tompei | 2005/06/06 12:03

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『ひとを<嫌う>ということ』(中島義道):

» 中島義道【ひとを〈嫌う〉ということ】 [徹也]
「哲学者が処方する、きちんと人を嫌える生き方」というのがスゴイ。 [続きを読む]

受信: 2005/05/26 22:58

« 教育実習先の先生 | トップページ | 『新選組!』続編が放送決定! »