『脳のなかの幽霊』(V・S・ラマチャンドラン)
神経学者が幻肢などの奇妙な症状から脳のしくみや働きを探り、さらに意識の謎に迫った本。一般向けにわかりやすく書かれている一方、専門家向けの詳しい註や参考文献が付けられており、幅広い読者層に対応しています。註は読まず、わかりにくいところは流し読みしましたが、それでも脳の不思議さ、面白さが十分に伝わってきました。
切断された手がまだあると感じたり、痛みを感じたりする幻肢。盲目になった人が見るいきいきとした幻覚。左側にあるものに無関心なため、顔の左半分に化粧をできなかったり、左側に置いた食べ物を無視したりする半側無視。左腕が麻痺しているのに、その麻痺を否定する疾病失認。家族を別人だと思うようになるカプグラの妄想。
以上のような症例を脳の観点から探って仮説を立て、実験によって立証していきます。その過程が非常に面白く、脳に対する興味がつきません。
著者は心、意識にも触れ、意識を実験的に検証できる問題として扱う研究方法があることを示唆しています。意識は脳の特殊化した神経回路から生じると提言し、クオリア(主観的感覚)問題についても語っていますが、このあたりは難しくていまひとつ理解できませんでした。
とは言え、人間を脳から眺めて、理解しようとすることは実に興味深い。著者は最後に下記のように書いていますが、この本を読み終えた今、私にもそう思えます。
自分の人生が、希望も成功の喜びも大望も何もかもが、単に脳のニューロンの活動から生じていると言われるのは、心が乱れることであるらしい。しかしそれは、誇りを傷つけるどころか、人間を高めるものだと私は思う。
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コメント
非常に興味深い分野です。立花隆さんの本は何冊か読みました。それでも、ニューロンに刺激を与える未知の刺激要素はあるんじゃないのかなぁと思います。気とか、勘とか、虫の知らせとか、そういうのも「あり」だと思っているのでした。
投稿: 惑 | 2005/05/04 22:20
>惑さん
こんばんは。コメントありがとうございます。
勘や虫の知らせは私もあると思います。ならば、脳のどこでどう感じるのか……そんなことが解明される日も来るのでしょうか? 何もかもが脳の活動から生じているとしても、それがすべて解明されてしまったら味気ないような気もします。知りたい……けれど、わからないから興味がつきないのかもしれませんね。
投稿: Tompei | 2005/05/04 23:45
これ、読んでみます。面白そう~。
投稿: ビアンカ | 2005/05/05 15:30
>ビアンカさん
こんにちは。
読んだらぜひ想を聞かせてくださいね!
投稿: Tompei | 2005/05/06 10:31