『魂萌え!』(桐野夏生)
定年まもない夫を心臓麻痺で亡くし茫然自失となった専業主婦に、追い討ちをかけるように夫の不倫が発覚……主人公の敏子は悲しみと惑いの混乱の中からやがて立ち上がり、独りで生きていく自覚を持ち精神的に成長をする……という小説。
よくありそうな話ですが、女のドロドロした部分をリアルに描く手法は桐野さんならでは。『グロテスク』では若い世代の女性に焦点を当てていましたが、これは、その後の中年(初老?)版という感じ。ただし、新聞の連載小説だったせいか、いつもの毒がなく少々中途半端な印象でした。それに、どの登場人物にもあまり共感できません。こうはなりたくないと思う女性ばかりで。
とは言え、敏子の世代を10年後に控えている身としては、いろいろ考えさせられる部分があり、印象に残る言葉がいくつかありました。
夢も希望も不安も悩みも、それぞれにいっぱい抱えていた少女時代から、あっという間に四十五年の月日が経った。年齢を経れば経るほど成熟し、迷いのない人生を送ることができる、と漠然と信じていたが、今が最も思い惑っている気がする。人生は、ままならない。どうせ、これから先は喪失との戦いなのだ。友人、知人、体力、知力、金、尊厳。数えだしたらキリがないほど、自分はいろんなものを失うことだろう。老いて得るものがあるとしたら、それは何なのか、知りたいものだ。
老いを生きることはどんな境遇にあってもなかなかたいへんそうです。夫婦の問題も表面化しそうだし……。何だか少々憂鬱になってきました。
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コメント
こんばんは^^
“娘から薦められた数十冊”の本の中のリストに入ってました^^;;;;これは激推薦ではなかったけど・・(^_^;)私アウト依頼ファンですけど、なかなか読めませんわ。
そのうち、夜な夜な頑張りますね(^^)
投稿: 桜桃 | 2006/02/08 21:13
>桜桃さん
おはようございます。
お嬢さんご推薦の数十冊……どんな本があるんでしょう? 興味津々です。子供さんと本の話ができるなんて、うらやましいわ。
確かにこれは「激推薦」ではないなぁ。やっぱりね、桐野作品にはもっとセンセーショナルな事件を求めてしまいます(^^;)。
投稿: Tompei | 2006/02/09 08:11