『王妃マリー・アントワネット』(遠藤周作)
王妃マリー・アントワネット (上巻) (新潮文庫)
王妃マリー・アントワネット (下巻) (新潮文庫)
宝塚の『ベルサイユのばら』を星組版、雪組版と観ているうちに無性に原作が読みたくなって、30年ぶりに全巻通して読んだら、すっかりベルばらワールドに取り付かれ、さらにこの小説を再読しました。これは、今年11、12月に帝劇で上演されるミュージカル『マリー・アントワネット』の原作でもあります。
この小説を読んだのは約20年ぶり……もともと遠藤周作ファンの私は当時、遠藤氏によるこのフランス革命の小説を興味深く読んだはずですが、詳しい内容はほとんど忘れていました。今回再読してみたら、遠藤氏ならではの視点からフランス革命やマリー・アントワネットが語られ、遠藤周作の小説の世界を懐かしく思いました。
『ベルばら』のようなロマンスを期待しては、肩透かしを食わされます。命を賭けて王妃一家を救い出そうとするフェルセン(この小説では「フェルゼン」と濁らない)は登場しますが、ロマンスの香りはほとんどありません。革命勃発前にベルサイユ宮殿で二人の甘い語らいがあるわけではありません。やはり無意識のうちに、そういうものを期待してしまう私……。
この小説の主役はフランス王妃のマリー・アントワネットですが、マルグリットという貧しい境遇の女性をアントワネットの対極に置いて、二人の女性の生き方を対比させつつフランス革命を語っています。その一方でキリスト者としての遠藤氏は、自身のキリスト教観を修道女アニエスに代弁させているようにも思えました。遠藤氏にとって唯一の海外歴史小説ですが、留学したフランスの地に対する格別の思いを感じます。
『エリザベート』や『モーツァルト!』のミヒャエル・クンツェ、シルヴェスター・リーヴァイのコンビがこの原作をどんなミュージカルに仕上げるか、期待は膨らみます。涼風アントワネットに対して、井上フェルセンは若すぎるように思えるけれど、大丈夫なのか? 山口カリエストロの使い方に興味津々。Wキャストのマルグリットも楽しみです。
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