『徳川の夫人たち』(吉屋信子)
何故か、今頃、大奥がマイブームです。テレビドラマを断片的に見て、何となく大奥のようすは知ってはいるものの、改めて小説を読んでみると、これがたいへん面白い。まず、松本清張の『大奥婦女記』でおおまかな流れと有名な人物を知った後、この小説を読みました。
三代将軍徳川家光の側室、お万の方の一代記。家光のお召しによって、17歳で尼寺の住職から還俗させられて大奥入りしたお万の方の数奇な運命を、吉屋信子が格別の思い入れを持って綴った小説です。
京の公卿の娘という高貴な生まれで、学識豊かで才知にたけ、しかも若さと美貌を兼ね備えたお万の方は、尼僧から将軍の愛妾という運命の転変を泣く泣く受け入れ、やがて家光の寵愛を一身に受けるようになります。そして、子を持てない弱い立場でありながら、春日局亡き後、取締として大奥を仕切ります。
その若さでちょっと人間ができすぎじゃない、と思いつつ、思い入れたっぷりの吉屋信子の文章に誘われ、ついお万の方に肩入れしながら読みました。視点を変えれば、お万の方だって鼻持ちならない女になりかねません。そのあたりが大奥ものの面白さかもしれませんね。
ドラマでは「嫉妬と確執が渦巻くドロドロした女の世界」という面ばかりが強調されますが、吉屋大奥はさすがに格調高く、華やかな大奥絵巻という印象でした。
関連記事:
『続 徳川の夫人たち』(吉屋信子) (2006年7月13日)
| 固定リンク
コメント