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2006/06/05

『文章読本さん江』(斎藤美奈子)

 ものすごく面白くて、一気に読了しました。谷崎潤一郎『文章読本』、三島由紀夫『文章読本』、清水幾太郎『論文の書き方』を文章読本界の御三家、本多勝一『日本語の作文技術』、丸谷才一『文章読本』、井上ひさし『自家製 文章読本』を新御三家に選定。その他何十冊もの文章指南書を徹底分析して、鋭く考察した評論です。

 と言うと、いかにも硬い論文のようですが、斎藤美奈子流の緩急自在な文体で、新旧文章読本を容赦なくばっさばっさと斬っていきます。時に会話体やパロディを交えてわざとオトシつつも、評論としての品位を保っている絶妙なセンスに感服するばかり。

 各時代の文章指南書の背景を検証するために、日本の作文教育の歴史にかなりのページを割いていますが、これがまた興味深くて面白い。結局、現在の文章読本は、「子どもらしい『表現の意欲』を重んずる学校作文と、大人っぽい『伝達の技術』求められる非学校作文」の隙間を埋めたもの、と著者は結論づけています。そして最後に、「文は服なり」と主張しています。

 何を隠そう、私は文章指南書につい手を出したがる性癖があって、本多本と井上本は本棚に並んでいるし、ほかにも読んだ覚えがある本が続々出てきて、かなり笑えました。けれども、再認識しました。いくら「文章読本が説く五大心得」を心がけて、「文章読本が激する三大禁忌」を犯すことなく、「文章読本が推す三大修業法」を積んだとしても、斎藤さんのような文章力やセンスは絶対身に付けられない、と。

 文章読本のあれこれも面白かったけれど、何より印象深かったのは、斎藤さんの文章なのでした。

 文章読本が説く五大心得
  ①わかりやすく書け
  ②短く書け
  ③書き出しに気を配れ
  ④起承転結にのっとって書け
  ⑤品位をもて

 文章読本が激する三大禁忌 
  ①新奇な語(新語・流行語・外来語など)を使うな
  ②紋切り型を使うな
  ③軽薄な表現はするな

 文章読本が推す三大修業法
  ①名文を読め
  ②好きな文章を書き写せ
  ③毎日書け

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コメント

はじめまして。
僕は、斉藤美奈子さんの著作としては、最近、『誤読日記』を読みました。
なかなか楽しめました。

投稿: サイン | 2006/06/05 18:31

>サインさん

 はじめまして。コメントありがとうございます。

 『誤読日記』はベストセラーの書評集のようですね。となると、やっぱり斎藤節全開なんでしょうね。これからいろいろ読んでみたいと思います。

投稿: Tompei | 2006/06/05 19:42

文章読本・・三冊は読んでますねえ(笑)。へぇそんな本があるんですか。まぁ超整理法だとか・・how to 本読んで すぐそうなれるなら・・ ねえ(^_^;) 才能や性格はDNAはそう簡単に変えられないから個性というものが成り立つのだと・・。

投稿: | 2006/06/06 23:43

>惑さん

 こんばんは。

 温かい(?)フォローありがとうございます。そう、片付け指南書、英単語増強指南書、文章指南書は、"つい手が出る how to 本"御三家です。最近はそこに「お肌がよみがえる」指南書も加わりました。買っただけで満足するタイプ。当然、成果は出ません。

 私だけではないようで安心しました(^^ゞ。

投稿: Tompei | 2006/06/07 00:58

Tompeiさん、「文章読本」のコラムおもしろく読ませて頂きました。文章を書くのは本当にむずかしいですね。私も読むのは好きだけど書くのは結構時間がかかる方なので「五大心得」「三大修行法」
「三大禁忌」とても参考になりました。コラムのなかで日本の作文教育の歴史について述べておられましたが今振り返ってみても学校の作文はむずかしかったですね。先生や他の子にも読まれるわけですから原稿用紙を前にああでもないこうでもないとため息ばかり。読書感想文は物語のすじが書けるので他の作文に比べると少しは気が楽でしたが「将来の夢」だの「社会見学の感想」だのになるとお手上げでした。自分の意見を書くのは苦手でしたね。結構制限がありましたから。日本では小学校の低学年から自由作文がありますが、人に聞いた話ではフランスだと高学年になってからだそうです。きれいな文章が頭に入っていないうちは自由作文は書けないという考えからで。その代わり、低学年の間に詩の暗唱大会がたくさんあって子供にきれいなフランス語の文章を覚えさせるそうです。それも一理あるかなと思いました。では。

投稿: みかん | 2006/06/19 15:29

>みかんさん

 おはようございます。

 この本にも書いてありましたが、作文教育というのは、先生が期待する「小学生らしい作文」像に当てはまるかどうかで評価が左右されるんですよね、文章の上手い下手以上に。先生や大人が気に入るような優等生的な内容の作文が「いい作文」なんです。読書感想文しかり。だから面白くなくて、嫌われるんだと思います。

 みかんさんはブログなどは作っていらっしゃらないんですか? 私はこれを始めて2年以上も経つのに、あいかわらず文章を書くのが遅いし下手っぴで嫌になります。でも、ブログを通じてお知り合いもできてブログライフを楽しんでおり、「継続は力なり」を実感しています。みかんさんも始めてみてはいかがですか?

投稿: Tompei | 2006/06/20 08:00

Tompeiさん、お返事ありがとうございました。日本の作文教育は戦前戦後を通じてやはり変わっていないのですね。私も本で読んだことがあるのですが戦争が激しくなってきた頃は授業はなくなってこどもたちは真冬でも裸足で校庭を駆け足させられてちょっとでも弱音を吐くと「戦地でもっとつらい思いをしている兵隊さんを思え。」と一喝されたそうです。そんななかでも先生に提出する作文や日記は必ず、男の子なら「大きくなったら兵隊さんになって立派にお国のために戦います。」と書かないとしかられたそうです。作家の北杜夫さんが「大きくなったら昆虫学者になりたい。」と書くと「この時局に何を軟弱なこといってるか。」といわれ、それではと特攻隊のことを書くと一番の出来で掲示板に大きく張り出されたとか。のべつまくなしに言いたい放題言うのはよくないけど自分の意見がまともにいえない時代なんてきてほしくないですね。

投稿: みかん | 2006/06/20 11:10

>みかんさん

 そうそう、戦前や戦中は作文教育=思想教育みたいなところがありましたよね。今はそれほど極端ではないけれど、「先生受け」する作文や感想文というのがあるように思います。

投稿: Tompei | 2006/06/21 00:12

Tompeiさん、作文であれ手紙であれ「読み手」を意識して書くとなると日記とは違うので時間がかかりますよね。決して独りよがりにならず、前後関係を整理してその上で自分なりにいいたいことをわかってもらう工夫をするとなるとああでもないこうでもないと書いては消し消しては書き、頭を抱えてうなり続けることになります。でも書くのが辞められないのは好きだからですね。国語の作文は好きではなかったですが大学時代に英語の宿題のエッセイを提出したところ「人まねではなくあなたらしさを大切にしなさい。あなたがどう考えているかが一番大事です。」とコメントが書かれていてうれしかったのを思い出します。

投稿: みかん | 2006/06/22 15:27

>みかんさん

 そうそう、このブログの記事も毎回、書いては消し消しては書いて、頭を抱えながらまとめています。でも何とかかんとか言いながら、やっぱり書くことが好きなんでしょうね。それに、自分の書いたものを読んでいただけて、時には反応までいただけるのが嬉しいからだと思います。

 みかんさんも文章を書くのがお好きなら、ぜひブログを始めてください。って、しつこいですね。でもでも、ぜひ!(^^) 

投稿: Tompei | 2006/06/22 19:48

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