『赤い指』(東野圭吾)
2週間のご無沙汰です。ちょっと日本を留守にしておりまして……と言いたいところですが、残念ながらそういうこともなく、淡々と日本の夏を過ごしています。この間、何冊か本を読みましたが、一番印象に残っているこの小説のことから書くことにします。
東野圭吾の直木賞受賞第一作。ほかの東野作品のようにするする読めて、数時間で読了。しかし、重苦しくてつらくて、やりきれない話です。少女殺人事件を扱っているものの、ミステリーというより家族小説という印象。老親の認知症、介護、同居の問題、嫁姑の確執、中学生の息子の引きこもり、息子を溺愛する母親、家族の問題を見て見ぬふりをする父親など、現代の家族が多かれ少なかれ抱えている問題が浮き彫りにされており、心がひりひりして身につまされました。
ひさびさに加賀刑事が登場する、加賀恭一郎シリーズ6作目でもあります。もちろん、加賀シリーズはこれが初めてでもまったく問題ありませんが、加賀の登場は東野ファンには嬉しい配慮と言えそうです。ラストを飾る加賀刑事と父親のエピソードは、「家族」がテーマのこの小説のサイドストーリーとして効果的。
そつなくまとまっていて映像化しやすそうな話だけど、うーん、私はあえて見たくないかな……。
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コメント
感動する場面はあるんですが、「ふりをする」っていうのはなんだかリアリティがないのでは、と感じました。
投稿: Giacomo | 2006/08/21 21:54
>Giacomoさん
こんばんは。
そう、考えてみれば、長期にわたって「ふりをする」なんてことができるのか疑問だし、「ふり」をしたままであれこれ「工作」するのも現実的ではないですよね。仮に「ふり」をしていたとしても、あんな事態になったら「ふり」をかなぐり捨てて、正面から息子一家にぶつかっていくのが親ってものではないかしら? または、全てを知りつつ、自ら身代わりになるか?
投稿: Tompei | 2006/08/21 23:36
本の装丁がちょっとおどろおどろしくって、
本屋で何度と手にとりつつも文庫になってからにしようかなと思っていました。
>しかし、重苦しくてつらくて、やりきれない話です。
そうですか、この本は重いのですね。
今は江戸の本に集中して(謎^^;)後回しにしましょう。
投稿: ぶんぶん | 2006/08/23 15:58
>ぶんぶんさん
こんばんは。
重苦しいんだけど、先を読まずにはいられないんですよ。こんな事件は起きないまでも、問題の根はのあちこちの家庭にありそうですごく怖くなります。あ、ぶんぶんさんのところは無縁なので大丈夫!
今、杉浦日向子監修『お江戸でござる』を読んでいます(^^)。
投稿: Tompei | 2006/08/23 21:54