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2006/09/15

『名もなき毒』(宮部みゆき)

 お江戸オフをめざして、この数週間、宮部さんの『本所深川ふしぎ草紙』『初ものがたり』『平成お徒歩日記』などを読んでいましたが、一段落したので新刊を買い求めました。江戸から平成の世にひとっ飛び。

 この小説の主人公は『誰か』と同様、今多コンツェルン会長の娘婿、杉村三郎で、彼の一人称で語られます。実は私、『誰か』は宮部作品としては物足りなく感じたので、この続編を期待と不安と半々で読み始めました。

 ほとんど一気読みに近い状態で読み終えたのは、宮部さんの現代ミステリーではいつものこと。でも……『火車』『理由』『模倣犯』のように、「早く先を読みたい、でも終わってしまうのが惜しい」というもどかしい興奮には至らなかったのが正直なところです。

 宮部作品の魅力は、事件やストーリーそのものだけでなく、事件をめぐる人々(加害者、被害者とも)の心情が宮部さんの鋭くも温かい視線で細かく描写されることによって、登場人物たちに共感を覚え、人間の強さ、脆さ、やさしさ、哀しさなどなどを実感できるところにあると思います。一人称の小説だとその魅力が半減してしまうように思えて仕方ありません。

 そもそも、私は杉村さんにあまり感情移入できないんです。「見るからに恵まれていて苦労も不幸もを知らない」杉村さんが事件に首を突っ込むことによって、人間の「毒」を知っていくという展開があまり好きでないというか……。善良な家族、杉村さん一家だって、それぞれに心の毒を抱えているはず。

 私の思いとは裏腹に、杉村さんシリーズが続きそうな気配を感じる結末……うーん……。宮部さんは大好きな作家だからこそ、いろいろ勝手なことを書かせていただきました。

追記(2013年7月13日):
 『誰か』『名もなき毒』の杉村三郎シリーズが小泉孝太郎主演でドラマ化され、放映が始まりました。杉村役の小泉さんは宮部さんのご指名とか。確かにイメージにぴったりです。第1回を見たら、原作に忠実に淡々と話が進み、なかなかいい感じ。小泉さんは演技が巧くなりましたね。語りもとてもいい。これからの展開が楽しみです。

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コメント

「誰か」は、あまり好きになれなかったのですが、この新刊は目に留まっていました。
昔ほどぐーっとのめり込めなくなっていて、買ってはいても読んでいない本が何冊かあります。

「誰か」でも、ところどころ宮部さんらしい温かい視点は覗いているのですけどね。


でも、買うだろうなぁ、この本。

投稿: | 2006/09/15 17:46

>涼さん

 こんばんは。

 涼さんも『誰か』はイマイチでしたか? この本は『誰か』よりは面白かったんですけどね……。終盤の杉村と今多会長の会話など、しみじみといい場面もありましたし……。と、何故か「……」を付けたくなってしまいます。

 宮部作品ゆえ、期待が大きすぎるのも低めの評価の一因かもしれません。涼さんの感想を楽しみにしています。

投稿: Tompei | 2006/09/15 23:08

 Tompeiさん、お久しぶりです。「名もなき毒」、私は、新聞の連載時に読んでいました。途中までは、感想を書いていたんですが、内容を覚えていられなくなって、中途半端になってしまいました。

 新聞では、叫んでおしまいだったんで、とても宙ぶらりんな気分でした。本屋で最後の方だけぺらぺらめくってみたら、追加されていてびっくりでした。宮部さんの作品は、ついつい、もっと面白くなるはず、と期待が大きくなってしまうので、そこが満たされないと、少しがっかりしてしまうわがままな読者です。

投稿: risumago | 2006/09/17 23:09

>risumagoさん

 こんばんは。

>新聞では、叫んでおしまいだったんで、とても宙ぶらりんな気分でした。

 えっ、そうなんですか?! もしかして、「バカ野郎」のところ? あの後があるのとないのでは大違いですね。新聞だから期間に制約があったのかしら?

 宮部作品でなければ、「なかなか面白くて満足」って思えるのに、ファンはわがままですね。でも、宮部さんの小説はこれからもずっと読み続けると思います。

投稿: Tompei | 2006/09/18 00:49

こんばんは、わがままなファンの一人です。
読みましたが、結局「誰か」よりも辛口の評価になってしまいました。

トラックバックさせていただきました。

投稿: | 2006/11/29 18:58

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「誰か」と同じく、スッキリしない終わり方だった。 [続きを読む]

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