『吉原手引草』(松井今朝子)
週刊誌の書評を読んで、図書館に予約を入れておいたのに、なかなか順番が回ってこないので、とうとう買ってしまいました。来週、吉原界隈を歩く予定なので、その前に読んでおきたかったのです。
吉原一を誇った花魁・葛城の失踪事件を、葛城をめぐる人物16人が語っていき、徐々に真相が明らかになる時代物ミステリー。いや、ミステリーという形式を借りた時代小説というべきか。謎を追う面白さもさることながら、吉原に生きる人々(遊郭の主、番頭、見世番、遣手、引手茶屋の内儀、幇間、女衒など)や客たちの生の言葉によって、特異な世界の様々な事情が語られるのがたいへん興味深く、一気に読み終えました。
真相がわかったところで、もう一度最初から読んでみたいと思える小説。肝心の葛城の語りはなく、読み手の想像に委ねられているのが余韻を誘うところでもあり、多少もどかしくもあります。
江戸時代の遊郭・吉原についてはほんの基本的な知識しかなかったけれど、これを読んだら知識がかなり増えたうえ、別世界だと思っていた吉原にいくらか近づけた気がします。それぞれの人物のその立場特有の言葉遣いを読んでいると、声が聞こえ、顔や姿が浮かんでくるから不思議。いつしか私も吉原に迷い込んでいるのでした。
追記(2007年7月18日):
松井さんがこの作品で直木賞を受賞されました。納得!の直木賞です。おめでとうございます!
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