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2007/08/19

『楽園』(宮部みゆき)

楽園 上 (1)
楽園 上
楽園 下

 『模倣犯』に登場したフリーライター前畑滋子を主人公にした長編現代ミステリーと聞いて、とっておきの図書カードで上下2巻を購入。むさぼるように読み始めました。

 読み出しの手応えは上々。「こういう小説を待っていたのよ」と思いつつ、夢中になって読み進みましたが、下巻途中から徐々に失速。読み終わってみれば、「思ったほどではなかったかな」という印象です。うーん、残念!

 身内に行状のよくない人物がいたら、家族はどうすればいいのか――テーマは重いし、考えさせられるけれど、ミステリーとしてのカタルシスが足りないように感じました。宮部作品に寄せる期待が大きすぎるからかもしれません。最後にどんでん返しがあるんじゃないか、とつい期待してしまう。いえ、どんでん返し=いいミステリーというわけではないけれど、終盤のクライマックスがミステリーを左右することは確か。この小説はそのあたりが弱い気がしました。

 交通事故死したサイコメトラーの少年が生前に描いた絵が話のキーになっていて、その絵の検証や少年の家族については多くのページを割いている反面、殺人事件の舞台である土井崎家の人々については傍から語られるばかりで本音が見えないので、すっきりしないのも難点。土井崎家の家族の歴史、一人一人の心情を詳しくわかってこそ、『楽園』というタイトルが生きてくるように思うのですが……。

 こんなふうに不満を感じてしまうのも宮部作品だからこそ。過去の作品が偉大であればあるほど、作家ってたいへんですね。

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コメント

読み出しは好調なのですね。

ほんと、宮部さんクラスになると読者もひとひねり、ふたひねりも期待しちゃうから、大変ですよね。

「楽園」というと、ついその前に「失」をつけたくなっちゃいますが、そっちも読んでいません^^;

投稿: ぶんぶん | 2007/08/19 17:52

お~!!もう読まれたんですね~!
私も新聞の宣伝を見て、気になっていました。
模倣犯の前畑滋子のキャラクター、良かったですもの。

私も買おうかなぁ・・と思っていたけど、買ってしまって、今ひとつだと悲しいかも・・・
でも、やっぱり読みたいので、図書館で予約しようと思います(*^o^*)

投稿: Leaf | 2007/08/19 18:48

ぶんぶんさんの「失」をつけるに受けてしまいました。(^^;

期待して読むとその反動が大きいです。
宮部みゆきは周りの友人も好きな人が多くて
薦められるがままにけっこう読みましたが
作品に好きと嫌いがあります。

同じ作家を読むことを最近はしているのですが
何となくこうなっていくというパターンみたいなのがあるように思えて
つい、こうなるぞ~!って期待してしまうことも多いです。(笑)

売れれば売れるほど、さらに売れる作品をと
プレッシャーに押しつぶされそうになりつつ書くのは大変でしょうね。
作り出す仕事というのは、いつもその産みの苦しみとの戦いなのでしょうね。

投稿: 陶片木 | 2007/08/19 19:52

ぶんぶんさん、Leafさん、陶片木さん、おはようございます。
夏休み明けの夫を送り出し、ようやくほっと一息です(^^ゞ。

>ぶんぶんさん

 ファンが期待しすぎて、かえって足を引っ張っているのかも? 普通に読めば、よくできた小説と言えるのに、「いろいろ勝手なことを言ってごめんなさい」って感じ。

 『失楽園』は私も読んでないけれど、『ひとひらの雪』は読みました。その後の作品はみんな似たり寄ったりの気がしちゃう(勝手な判断)。渡辺淳一の若い頃の作品は好きでよく読んでいたのになぁ。

>Leafさん

 感想はそれぞれだと思うので、Leafさんもぜひ読んでみてくださいね。『模倣犯』を読んで日が浅いと話がつながって面白いかもしれません。残念ながら、私はすでに『模倣犯』の詳しい内容を忘れているんですよ(^^;)。

 お近くなら、お貸しするのにね。宮部さんは人気があるから、図書館だと順番待ちがたいへんそう。

>陶片木さん

 分野は違うけれど、産みの苦しみと戦っている陶片木さんならではのお言葉ですね(^^)。たいへんだからこそ、会心の作が生み出せると喜びが大きいんでしょうね。陶片木さんも頑張ってください!

 宮部作品には、期待するなと言われても、期待してしまいます。だから、ちょっと面白いくらいでは満足できないみたい。こういうのって、確かにすごいプレッシャーでしょうね。

投稿: Tompei | 2007/08/20 08:27

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