『まんが 医学の歴史』(茨木保)
現役の医師で漫画家の著者による漫画版医学史。何かの書評を読んで図書館に予約を入れたものの、いざ順番が回ってきたら「医学史なんて興味があるわけじゃないのに、何故、予約を入れちゃったんだろう」と思ったのが正直なところ。ま、折角だから、ちょっと中味を拝見……と思って読み進めたら、これがとても面白くて、あっという間に読み終わりました。
「医学の進歩に大きな影響を与えた出来事と人物に焦点をあてて、太古の昔から21世紀の現代までの時の流れをオーバービューしたい」という著者の言葉のとおり、古代の宗教的・魔術的治療から現代のクローン、ES細胞、ⅰPS細胞まで、わかりやすくまとめてあります。専門的で理解できない箇所もありましたが、医学の大きな流れがつかめて満足。医学の発展に貢献した人物たちの生き方はそれぞれに興味深く、漫画に助けられて楽しく読めました。
江戸時代の日本における医学の進歩、明治時代の北里柴三郎、野口英世についてもよく理解できました。野口英世が生前に発表した医学研究の多くは後に誤りと判明していること、苦労人の反面、浪費家だったことなど、子供時代に読んだ伝記では知りえなかったことがわかって「へぇ!」の連続です。
医学の歴史を振り返ることは人と科学について考えることであり、人の命、人生を考えることだと感じました。漫画の最後はアインシュタインの次の言葉で締めくくられています。
我々が進もうとしている道が正しいものであるかどうか、神は前もって教えてくれはしない。
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コメント
こんにちは
野口英世はアメリカの大学では殆ど評価されていないのに、日本人観光客が来て銅像(だったかな?)の写真を撮っていく。 という話を聞いて、少々ショックを受けたものです。
あれは何の本だったのかしら?
というのが、只今の私です (-_-;)
投稿: 涼 | 2008/06/23 14:57
おお~。おもしろそうな漫画ですね~。
若い時に父を亡くした友人の医師が、
医師と患者の関係を親子になぞらえて書いていて、
こちらもおもしろかったので、ちょっとご紹介しますね。
http://tsyosh.cocolog-nifty.com/blog/
投稿: mymy | 2008/06/23 15:42
涼さん、mymyさん、こんにちは。
さっそくのコメントありがとうございます。
>涼さん
その本はもしかして、ベストセラーの『生物と無生物のあいだ』でしょうか? 私はまだ読んでいませんが、野口英世のそんな話が書いてあるようです。難しそうで敬遠していたけれど、これを機に読んでみようかしら。
この本にも書いてあるけれど、忍耐や克己を象徴する野口英世の人生は一昔前までの日本の道徳教育にふさわしい素材だったということでしょうか。人格と研究の評価は別だけど、「野口英世の伝記必読」世代には何となく解せませんね。
>mymyさん
ご紹介ありがとうございます! おお、つよぽんさんはブログも書いていらっしゃるんですね。mymyさんのところでよくお見かけしています(^^)。お気に入りに登録しました。
医者と患者の関係……理想的な関係を築くには双方の歩み寄りが必要ですよね。医者に対して敬意を表しつつ、医者も自分と同じ不完全な人間だと認識するってことかしら。患者側からすれば、医者は慰者であって欲しい。
投稿: Tompei | 2008/06/23 17:33
漫画家のドクター、手塚治虫以外にもいたのですね。
知りませんでした。
野口英世の伝記は子供の時に読みましたが
そんなに違うのですか?
それも知らなかったです。
>医者は慰者であって欲しい。
父のドクターの最初の先生はこんな感じでした。
ドクターもいろいろですよね。
投稿: 陶片木 | 2008/06/23 18:58
>陶片木さん
この著者は手塚治虫を尊敬しているらしいです。産婦人科の開業医と漫画家を両立させているのはすごいですよね。
野口英世はお札の顔にもなっているのに、意外にも医学的な貢献はそれほどでもないんですって。知名度は抜群ですけどね。
いろいろなドクターがいて、いろいろな患者がいるんですよね。普通の人間関係と同じく、相性みたいなものもあるかもしれません。
投稿: Tompei | 2008/06/23 23:28
私も読みたい本ですが、何より。
帰国した野口エーセーに読ませないと。
ですね!(笑)
投稿: ayakokin | 2008/06/24 12:23
>ayakokinさん
野口英世と聞くと、私までエーセーくんを思い浮かべてしまうようになりました(^^;)。会ったこともないのにおかしいですね。この本はayakoさんならご存知のことばかりと思いますよ。
投稿: Tompei | 2008/06/24 19:45