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2013/12/13

歌舞伎座十二月大歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』

 今年1月から続いた私的歌舞伎教室も残すところあと2回になりました。ラスト2回は『仮名手本忠臣蔵』で締めくくります。

 歌舞伎座では先月から『仮名手本忠臣蔵』の通し狂言が月替わりの配役で上演中。先月はベテラン、今月は若手中心の配役で、幸四郎、玉三郎、染五郎、海老蔵、菊之助、七之助ら、豪華な面々が演じています。

Img≪昼の部≫

大 序  鶴ヶ岡社頭兜改めの場
三段目 足利館門前進物の場
      同  松の間刃傷の場
四段目 扇ヶ谷塩冶判官切腹の場
      同  表門城明渡しの場
浄瑠璃 道行旅路の花聟

≪夜の部≫

五段目 山崎街道鉄砲渡しの場
      同   二つ玉の場
六段目 与市兵衛内勘平腹切の場
七段目 祇園一力茶屋の場
十一段目 高家表門討入りの場
       同 奥庭泉水の場
       同 炭部屋本懐の場

 昼夜を通しで観ると、11時から21時まで10時間もかかるので、体力も集中力もとても続きません。2日に分けて、昼の部は昨日12日に観劇、夜の部は来週17日の予定です。

 まずはウンチクを少々。この演目は忠臣蔵といっても、元禄時代に起きた浅野内匠頭の刃傷事件や赤穂浪士の討入りをそのまま舞台化したものではなく、時代背景を南北朝時代の『太平記』の世界に借りています。実際に起きた事件を舞台化することを幕府が禁じていたので、設定を換えているわけ。実在の人物を『太平記』の登場人物の名に置きかえたり、独自に創作したりしています。
 吉良上野介 ⇒ 高師直
 浅野内匠頭 ⇒ 塩冶判官
 大石内蔵助 ⇒ 大星由良之助

 刃傷事件と討入りを下敷きにした筋立てですが、本筋とはあまり関係ないエピソードがかなりの部分を占めています。忠臣蔵だけど、忠臣蔵じゃない、と言ったらいいか。ちなみに、仮名手本とは、四十七士をいろは四十七文字になぞった名題。人形浄瑠璃の演目として創作・上演され、人気を博したため、まもなく歌舞伎でも上演されるようになりました。

昼の部観劇(12月12日)

 歌舞伎の何が面白いって、昔からの慣習が今も変わらず続いていること。理屈とか効率ではなく、あくまでも伝統重視であること。今回でいえば、大序の演出はとても興味深く印象的でした。

 幕開きの前に口上人形が登場し、「えっへん、えっへん」と言いながら、全配役を紹介します。その後「とーざい、とーざい」という声がして、定式幕が開けられますが、舞台上の人物はみな人形のように顔を伏せています。かつて時代物の序段はみなこのように始まったそうですが、現在は『仮名手本忠臣蔵』でしか見られません。

 前半の主な人物が鶴ヶ丘八幡宮に勢揃いする大序から始まり、「松の廊下」の刃傷事件にあたる三段目、塩冶判官の切腹と城明渡しの四段目と続き、最後におかると勘平の道行があります。道行とは、旅する場面を所作(踊り)で表現したもの。本来は三段目の最後にあった場面を道行風にアレンジして、荘重な四段目の後につける慣習だそうです。

 この道行の海老蔵さんと玉三郎さんが綺麗でね。夜の逃避行なのに舞台は明るく桜や菜の花が咲き乱れていて、切腹と城明け渡しの場面の暗さや重さを払拭できるのです。ま、宝塚のフィナーレみたいなものですね。

 海老蔵さんは休演の三津五郎さんの代役で高師直を演じていて、いじめたり言い寄ったり熱演していました。が、これはやっぱり三津五郎さんで観たかった。三津五郎さんはその後、どうされているか、心配です。11月の高師直役の仁左衛門さんも休演されたし、歌舞伎界は何故こんなに病人が続くんでしょう。

 師直(海老蔵)と判官(菊之助)、若狭之助(染五郎)の三人の見栄の場面が色彩的にもルックス的にも美しかった。有名な「由良之助はまだか」は判官の切腹前の台詞だったのですね。納得しました。途中、少々眠くなりながらも何とか4時間半頑張りました。歌舞伎は長すぎる!

夜の部観劇(12月17日)

 やっぱり、忠臣蔵は討ち入りに向かう後半のほうが断然盛りあがりますね。

 「色にふけったばっかりに」悲劇的な最期を迎える勘平役の染五郎さんは美しさの中に哀れさとはかなさを誘うし、七之助さんのおかるもいじらしくていいコンビでした。

 続く祇園の廓の場面の玉三郎さんのおかると海老蔵さんの兄・平右衛門はとびきり美しく、緩急自在の演技が素晴らしく息もぴったりで、目にも満足、胸にも迫る至福のひとときでした。今年いろいろな役の海老蔵さんを観ましたが、この役に一番心を動かされた気がします。

 この日、帰宅後、中村獅童さんのお母様が亡くなったことを知りました。獅童さんは普段通りに出演され、切れのある殺陣を見せていましたが、急なことでお辛いでしょうね。ご冥福をお祈りいたします。

 火消し装束が格好いい浪士たちの勝鬨に送られて歌舞伎座を出ると、銀座の街は華やかなイルミネーションに彩られており、舞台の余韻にひたりながらルンルン気分(死語)で歩きました。

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コメント

昨日新聞評が出てましたね~^^

お友だちがお母さまを連れて行きたかったけどチケット取れなかったって言ってました。豪華役者だぁ。一度は観たいなぁ~と思いつついつになるか。Tompeiさんの記事で行って観たつもりにしておこう^^;
いつかを楽しみにします☆

いよいよ明日討ち入りですね。
地図までわざわざお送りくださってお手数おかけしました。楽しみにしています。

よろしくお願いします。

投稿: 桜桃 | 2013/12/13 15:57

その長さ、演者さんも大変ですよね。
重い衣装に白塗りに長い舞台を何日も…ってことで体にはよくないのかしら

忠臣蔵…頑張りましょう。寒そうだな…

投稿: ゆれい | 2013/12/13 21:32

桜桃さん、ゆれいさん、おはようございます。
いよいよ討入りですね!(^^)

>桜桃さん

 ヅカで養ったチケット獲得力があれば、歌舞伎は案外楽にチケットが取れますよ(^^)。ましてJ系とは比べものになりません。観たい演目があったら、ぜひチャレンジしてみてね。

 来年は落語鑑賞にトライしようと思っています。落語はまだ未体験なのでね。

>ゆれいさん

 病人が続くのは、歌舞伎座のたたりとか言われていますよね(--;)

 観客は高齢者が多いのに、よく4時間半ももつわ。と思ったら、途中結構寝ている人がいました。私はヅカの3時間程度がベストだわ。

投稿: Tompei | 2013/12/14 09:19

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