2010/03/24

『風雲児たち』(みなもと太郎)

風雲児たち (1) (SPコミックス)
風雲児たち (1) (SPコミックス)

 最近のマイブームはこれ。江戸時代を舞台にしたマンガですが、面白くて面白くて全20巻を完読しました。飽きっぽく長編が苦手な私にとって、20巻は新記録です。

 風雲児とは幕末の志士のこと。坂本龍馬、西郷隆盛、吉田松陰、高杉晋作、桂小五郎、勝海舟、近藤勇、土方歳三、徳川慶喜などなど。彼らが活躍した幕末を描くことが作者の目的ですが、幕末を理解するためにこのマンガはなんと関が原の戦いから始まっています。つまり江戸時代の大河ドラマというわけ。といっても、ただの通史ではなく、作者が重要視する人物や事件を取り上げて、大きな流れをわかりやすく描き出しています。

 しかも、ギャグマンガで! デフォルメされた登場人物の姿や台詞にくすっと笑いながら、人物を知り、歴史を知り、人生を考えさせられる優れもの。歴史の不条理もあれば、人の弱さも愚かさもあれど、日本人であることを誇らしく思えるエピソードが満載です。保科正之や田沼意次などを見る目が変わり、林子平や高山彦九郎や最上徳内など今まで知らなかった人物のことが強烈にインプットされました。

 がしかし、20巻目の最後は18歳の竜馬が江戸に向かって土佐を後にする場面……幕末の佳境はこれからだった。続きは『風雲児たち 幕末編』として刊行され、現在も連載中だそうです。すでに単行本が10数巻出ているようなので、早く続きを読みたい! が、図書館には幕末編は置いてないんです(涙)。ブックオ○かヤフオ○で入手するしかない。とは言え、図書館にマンガを置いてない自治体が大半と知って、わが調布市には感謝しています。
201003241505000
(こんなふうにして10冊セットでバッグごと貸し出されます)
調布市立図書館マンガ資料収集に関する基本的方針

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2009/10/05

『新参者』(東野圭吾)

新参者
新参者

 またJCBのポイントで東野圭吾の新刊をゲットして、昨日1日で読み終えました。忘れないうちに感想を書いておきます。

 お見事! 読み終わって、思わず呟きました。9つの短編が1つの長編ミステリーとして集約し完結する手法が鮮やかに決まっています。事件そのものには目新しさはなく、どんでん返しもないけれど、「さすが、東野圭吾!」と感服しました。私は連作短編より長編のほうが集中できて好きですが、この小説の魅力は連作短編集であればこそと思います。

 タイトルの新参者とは、日本橋署に着任したばかりの加賀恭一郎刑事であり、小伝馬町に引っ越してきたばかりの被害者、三井峯子であり。この小説の主役はやはり、殺人事件の舞台となる人形町界隈でしょう。事件をめぐる人々が関わり合う人形町の商店が次々に出てきて、様々な家族模様が繰り広げられます。下町の人情と家族の絆をテーマにしたヒューマンミステリー……その点では宮部みゆきの小説に通じるものがあります。

 嬉しいことに、私は人形町の「古参」なので、余計にこの小説を楽しめました。かつて通勤していたので、人形町や小伝馬町には馴染みがあります。街の雰囲気や位置関係はもちろん、人形焼の重盛や板倉屋、刃物のうぶけや、卵焼きの鳥近、喫茶の快生軒、2つの三菱UFJ銀行など、モデルになったお店が浮かんでくるのは幸せな読者と言えそう。その他のお店も具体的にイメージしながら読みました。たい焼きの柳屋が出てこなくて残念!

 もし映画化するとしたら、ロケを中心にして、人形町をアピールして欲しいな。加賀は竹野内豊なんかどうかしら?(10/6自己レス:竹野内豊は東野さん原作の映画『さまよう刃』に出演しているのね)

写真追加(2010年1月7日)
 日本橋七福神めぐりで人形町界隈を歩いたので、小説の中に出てくるお店のモデルになったお店の写真を撮ってきました。
左:刃物専門店「きさみや」のモデル→「うぶけや」
右:創業大正8年の喫茶店→「快生軒」

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追記(2010年2月10日):
 4月からのTBS日曜劇場でドラマ化されるそうです。加賀は阿部寛さん! ちょっとイメージとは違いますが、大好きな俳優さんなので、とっても楽しみです。

ドラマ『新参者』 (2010年4月19日)


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2009/07/09

『源氏物語 第一巻 桐壺~賢木』(大塚ひかり訳)

源氏物語〈第1巻〉桐壺~賢木 (ちくま文庫)
源氏物語〈第1巻〉桐壺~賢木 (ちくま文庫)

 宝塚の舞台から始まったマイブーム「源氏物語」は細々続いています。田辺聖子さんの『新源氏物語』、宇治十帖『霧ふかき宇治の恋』に続いて、講演録の『源氏がたり』を読み終わって、いよいよ全訳にチャレンジしています。

 何故、大塚さんの訳から読み始めたか――。書店で初めてこの本を手に取った時は冒頭を読んだだけですぐ戻しましたが……。「いずれのミカドの御代でしたか」――この「ミカド」でいきなり拒絶反応。源氏物語の訳にカタカナを使うなんてとんでもない!と思いました。

 ところがその後、同じ著者の『もっと知りたい源氏物語』を図書館から借りてきて読んだら、これがとても面白かったのです。「光源氏のセックス年表」「薫と匂宮のセックス(レス)年表」「光源氏が寝た女たちの顔と体格」一覧表など、源氏物語解説書らしからぬ切り口が新鮮で、しかもあらゆる角度から微に入り細に入り考察されていて、知的好奇心ならぬ野次馬根性がおおいに刺激されました。

 とは言え、全訳に登場する「セックス、エロい、スケベ、超ラッキー、ラブラブ」などの言葉には引いてしまうのが正直なところ。その違和感を補って余りあるのは、<ひかりナビ>と称する著者の解説です。2~3ページごとにかなり詳しい解説があり、初心者も源氏物語を理解し楽しめるように工夫されています。また、各章に人物相関図がついているのもわかりやすい。源氏物語全訳入門にもってこい、とくに若い世代向きの訳書と言えそうです。

 これを全巻読了できたら、瀬戸内寂聴さんの訳も読んでみたい。そこまで興味が続いたらの話ですが……。まだ全体の1/6なので、道は遠いです。

もっと知りたい源氏物語
もっと知りたい源氏物語

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2009/06/27

『江戸名所図会』(ちくま学芸文庫)

200906271042000 ふらっと立ち寄った新宿西口の古本市で『江戸名所図会』の文庫本を2冊ゲットしました。1冊650円也。嬉しい! 

 ちくま学芸文庫のこのシリーズは現在絶版で中古本以外入手できないんです。ネット販売では定価より高めの値段がついていて、ちょっと敬遠してしまう。そこで、地元の図書館で借りてきては、返却と貸出を繰り返している次第。真剣に読むわけではないけれど、手元に置いておいて見たい時にすぐ開きたい本なのです。

 緻密に描かれた絵を眺めていると江戸にタイムスリップした気分になれるし、現在のようすとオーバーラップさせるのも面白い(老眼鏡や拡大鏡は必須)。これがあるとお江戸歩きの楽しさが倍増します。170年後もガイドブックとして役立っていることを、編纂した齋藤家3代と挿絵を描いた長谷川雪旦に伝えたい!

 残り4冊ともどこかで出会えますように。何よりも復刻されることを願っています。

Kanda
神田明神社

追記: 2009年11月に復刻されました。入手したい方はお早めにどうぞ!

新訂 江戸名所図会〈1〉天枢之部 ちくま学芸文庫
新訂 江戸名所図会〈1〉天枢之部 ちくま学芸文庫


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2009/03/07

『仮想儀礼』(篠田節子)

仮想儀礼〈上〉
仮想儀礼〈上〉

 田辺聖子さんの宇治十帖を読んでいる最中に図書館から予約本用意のお知らせがあり、「雅やかな世界の恋模様に心ときめかせているのに、新興宗教の話なんてタイミング悪すぎ」と思いつつ、分厚い単行本上下2冊を借りてきました。読み通す気力はないまま、せめて最初の部分くらい目を通そうと思って本を開いたら……結局、最後まで読んでしまいました。

 篠田さんの小説はひさしぶり。篠田節子の代表作と言えば『女たちのジハード』ということになりそうですが、私は『聖域』『弥勒』『ゴサインタン』あたりの作品が好きなので、書評を読んでこの『仮想儀礼』にも興味を持った次第。仕事を失くして食うに困った2人の男が新興宗教を立ち上げる話です。

 あらすじは――正彦(教祖)と矢口がお金儲けのために始めた聖泉真法会のもとに次第に信者が集まってくる。まずは、「生きづらい」系の若者たちと、悩みを抱えてご利益を求める主婦たち。やがて、資金や土地、建物を提供する企業や財産家が現れて、聖泉真法会は大きく発展する。ところが、既成の大教団や政治家にも繋がる脱税事件に巻き込まれて破綻し、信者も一斉に離れる。再び振り出しに戻った聖泉真法会には女性信者数名が残り、正彦や矢口と集団生活を続けるうちにいつしかカルト化していく。

 聖泉真法会が発展していく過程が描かれる上巻はテンポよく進みますが、破綻後の集団生活からラストに至る展開はかなり重たくしんどいです。でも、著者が書きたかったのは後半のほうではないでしょうか。実体のないまやかしの神が女性信者の中で実体化していき、教祖も意図していない怪しげな宗教に変貌し、制御できなくなっていく過程は不気味で恐ろしい。世間を騒がせたいくつかのカルト教団が脳裏に浮かび、「こういう側面もあったのかも……」と思えるほど、リアルで説得力がありました。

 「神を必要とする者が心の内に神を作り上げていく」(本文から引用)ことが信仰というものなのでしょうか。人の心や宗教について深く考えさせられ、「読まずに返却しないでよかった」と思いました。

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2009/02/13

『新源氏物語』(田辺聖子)

新源氏物語 (上) (新潮文庫)
新源氏物語 (上) (新潮文庫)

 田辺聖子ファンでありながら未読だった『新源氏物語』を今頃になって読みました。きっかけは、宇治十帖を舞台化した宝塚の『夢の浮橋』。これまで宝塚で上演された『新源氏物語』や『あさきゆめみし』も当然観ているのに、「本を読んでみたい」と思ったのは今回が初めて。ま、早い話が、主役の匂宮の直衣姿にときめいたわけですが(笑)、その割には背景がいまひとつ把握できずもどかしかったのです。そこで、名作の誉れ高いこの小説を読んでみた次第。

 とても面白かった! 紫の上の死までを文庫本3巻の長さにまとめてありますが、単なるダイジェストではなく、小説として楽しめるのが魅力です。田辺さんが後書に書いているように、「注釈を見なくてもすらすら読める、原文の香気の失せない面白いよみもの」になっているのです。柔らかく美しい文章に誘われて、源氏物語の世界を堪能しました。

 今まで知っている場面と場面がつながり、大きな流れをつかめて納得できました。源氏物語ということで、読み始めは少し構えていましたが、途中からは源氏と女たちの関係がどうなっていくか興味津々で、メロドラマを見ているかのように楽しんでしまいました。描かれているのは千年前の雅やかな貴族社会だけど、人の心理は今とちっとも変わりません。人間くさい光源氏を近しい存在に感じました。それにしても、"まめ"なお方。

 何故、今まで読まなかったんだろう? 枕草子を小説にした『むかし・あけぼの』は大好きなのに、『新源氏物語』に手を出さなかったのは片手落ち。遅ればせながら読めてよかった。匂宮が登場する宇治十帖版を続けて読みたいところですが、別の予約本が回ってきたので、いったん江戸時代に行ってきます。

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2009/01/23

『おそろし 三島屋変調百物語事始』(宮部みゆき)

おそろし 三島屋変調百物語事始
おそろし 三島屋変調百物語事始

 地元の図書館での予約待ちが200番位まで進みましたが、結局買い求めてしまいました。これの続編にあたる『三島屋変調百物語事続』が年初から読売朝刊で連載されているので、早いところ読みたくなったのです。この『…事始』を読んでなくても話が通じるようになっているけれど、どうせなら最初から読みたいと思いまして……。

 神田の袋物屋三島屋に行儀見習いの名目で預けられた主人の姪っ子「おちか」が聞き集める変わり百物語。不幸な事件に巻き込まれて心を閉ざした「おちか」が、様々な人の不思議で怖い話を聞くうちに次第に癒されていくお話です。

 この小説で語られる変わり百物語は、いわゆる物の怪や妖怪の話ではなく、人の心の闇が映し出した話。一番怖いのは人の心というところでしょうか。となれば、人物の心情描写が巧い宮部さんの筆が冴え、心地よく宮部ワールドにひたれます。

 がしかし、5話のうち最終話で風向きが変わり、大団円に向かって強引な展開になるのが惜しまれます。何だか『ブレイブストーリー』を思い出す……声高に教訓を掲げるファンタジー。私はどうもこれが苦手です。

 新聞連載の『…事続』では百物語の第6話が始まっていて、こちらはまた今後の展開が楽しみです。ただ、毎日少しずつという読み方には慣れてないため、まどろっこしくてたまりません。

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2008/11/28

『聖女の救済』(東野圭吾)

聖女の救済
聖女の救済

 『容疑者Xの献身』に続くガリレオシリーズの長編。映画『容疑者X…』鑑賞後、気分が盛り上がって、思わず単行本を購入したのですが……うーん、期待したほどではなかったかな。いや、もちろん一定のレベルはクリアしていて、一気読みさせる力は持っていますが、『容疑者X…』のような満足感、カタルシスは得られませんでした。

 今回も冒頭から犯人がわかっていて、「理論的には考えられるが、現実的にはありえない虚数解」のトリック(by 湯川)の謎を解明するストーリー。それが明らかになって驚きはしたけれど、現実味に乏しく共感できずに読後感がすっきりしませんでした。フィクションだから、現実離れしていようがうまくだましてもらえれば文句はないけれど、残念ながら相性が悪かったようです。

 テレビドラマと映画で柴咲コウが演じている女性刑事・内野薫が今回、小説に登場。薫が福山雅治の歌を聴くシーンもあって、ガリレオファンへのサービスもぬかりない。しかも、草薙刑事(北村一輝)も重要な役どころなので、ドラマのノベライズ版といった趣きで、それぞれの顔や声や演技が浮かんでくるのも個人的にはあまり喜ばしくありません(天邪鬼?)。

 『聖女の救済』という意味深なタイトルは、トリックがわかると「なるほど!」と納得。けれども、「献身」の犯罪の一本勝ちでした。

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2008/11/14

新宿に大型書店オープン

Bookfirst 新宿にまたひとつ大型書店がオープンしました。西新宿の高層ビル群の中でもひときわ異彩をはなつモード学園コクーンタワーの地下1階、2階に開店したブックファースト新宿店です。

 公式サイトによれば、売り場面積1090坪、90万冊の品揃えとのこと。老舗の紀伊国屋(本店1000坪、新宿南店1434坪)や昨年増床したジュンク堂(1650坪)には及ばないものの、西新宿では最大の書店になります。京王線利用の身には嬉しい限り。新宿に出たついでにさっそく寄ってみました。

 ビルの構造上、売り場は中央を取り巻く変則的な形になっていて、7つのブロックにジャンル別に本が並んでいます。かなりややこしい作りなので、フロアマップを見ながらうろうろしてしまいました。慣れるまでちょっとたいへんそう。お目当ての本がある場合は、店内のナビで探せるようになっていますが。

 残念なのは、ブックファーストのサイトに検索機能がないこと。こういう大型書店のいいところは、中小書店にはないような本を置いてあって、在庫確認ができることかと……。Amazonなどのネットショップに注文する方法もあるけれど、買う前に中をチェックしたい時もありますよね。これからのサービス拡充に期待したいと思います。

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2008/07/10

『耳と文章力――上手な文章を書く秘訣』(丸山あかね)

耳と文章力―上手な文章を書く秘訣
耳と文章力―上手な文章を書く秘訣

 音楽の「絶対音感」のような「絶対文章感」なるものはあるのか、を考察したエッセー。著者の造語「絶対文章感」とは、文章に対する天性の才能のこと。文章力は生まれつきの才能なのか、後天的に獲得できるものなのか、を作家や学者とのインタビューを交えつつ探っています。

 国語学者の大野晋、言語学者の外山滋比古、作家のなかにし礼、重松清、小池真理子、清水義範、大学で論文を指導する教師、聴覚障害者の言語教育に携わる大学教授、ATOKの開発会社の社員など、言葉に関わる人々のさまざまな意見が興味深く面白い。著者の結論は、

「絶対文章感」はない。けれど感受性をも含めた「文章感」は存在する。

であるけれど、その是非よりも、この問題について考える機会を与えられたことに意味がありそうです。

 とくに印象深いのは、「文章のリズムをつかむには、文章を『耳で読む』ことが必要」という点。意味だけ拾うのは『目で読む』ことで、『耳で読む』には音読するか、心の中で声を出して読まなければならないとのこと。好みの作家の文章を耳で読み、徹底的に読み込んで文章リズムを体得して、書きたいことをそのリズムに乗せて書く――外山氏推薦の文章上達法です。あとは、毎日書いて書いて書きまくるしかないらしい。

 ブログを始めて4年少々、更新頻度が低いとは言え、800近くの記事を書いているのに、一向に文章力がつかないのは絶対文章感がないからに違いない。ネット上で「いいな」「うまいな」と感じる文章に出会うと、どこが違うのかしばし考えてしまいます。言いたいことがはっきりわかるのは最低条件。その人独自のリズムがあって、押し付けがましくなく自然に個性が滲み出ていて、喜怒哀楽はストレートなのに冷めた目が同居していて、発想が柔軟かつ斬新で比喩がユニーク……そんな文章に惹かれます。やっぱりセンスなのかな?

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